乳房星(たらちねぼし)−1・0

【悲しい色やね】

(ジュー…)

さて、その頃であった。

またところ変わって、大阪メトロの梅田駅のコンコース付近にある立ち食いの串カツやにて…

店内にゆみさんがいた。

ゆみさんは、串カツをさかなに生中をのんでいた。

ゆみさんは、ポムじいさんのお使いで大阪にやって来た。

「ヘイお待ち〜」
「おおきに。」

この時、ゆみさんが頼んでいたうずらの串カツができあがった。

ゆみさんは、追加の串カツを注文した。

「せや…おっちゃん、ナンコツ揚げて〜」
「ヘイ、ナンコツ一丁〜」

この時、ダサい色のジャージ姿のゆらさんがやって来た。

「ヘイいらっしゃい〜」
「おっちゃん、生大ジョッキちょうだい…レンコン2個揚げて〜」
「ヘイ、ただいま〜」

この時、ゆらさんのとなりにいたゆみさんが困った声で言うた。

「ゆら。」
「なあにゆみねーちゃん。」
「なあにじゃないでしょあんたは…あんたはどこのどこまでデリカシーのないドアホよ~」

この時、ゆらさんが注文していた生大ジョッキが届いた。

「ヘイ、生一丁〜」
「おおきに〜」

ゆらさんは、大ジョッキに入っている生ビールをひとくちのんだ。

ゆみさんは、ものすごく困った声でゆらさんに言うた。

「あんたまたドカバキの大ゲンカ起こしたみたいね~」
「せやけど~」
「相手は、ご近所の奥さまだったわね~」
「せやけど~」
「なんであんたは、ケンカを売ったのよ?」
「なんでって、顔がナマイキだからケンカした…」
「それだけの理由でドカバキの大ゲンカを起こしたのね~」
「せやけど…」

この時、ゆらさんが注文していたレンコンの串カツができた。

「ヘイお待ち〜」
「おおきに〜」

ゆらさんは、レンコンの串カツを四角のアルミの入れ物に入っているオリバーソースをつけて食べた。

ゆみさんは、ものすごくあきれた声で言うた。

「ゆらはなさけないわね…」

この時、ゆらさんがソースを二度づけしようとしたのでゆみさんが怒った。

「二度づけしられん!!」
「なんで?」
「アカンもんはアカン!!」
「なんやねんケチ!!」
「ケチと言うてもアカンもんはアカン!!」

ゆみさんに怒鳴られたゆらさんは、一個目のレンコンを全部食べきった。

ゆみさんは、怒った表情でゆらさんに言うた。

「話かわるけど…先週の金曜日にゆらが起こしたドカバキの大ゲンカだけど…ゆかねーちゃんは今でも怒り狂っているわよ!!」
「なんでやねん…」
「あんたがゆかねーちゃんを怒らせた言葉を言うたからよ!!」
「うちおぼえてへん〜」
「せやけんうちはあんたがいらつくのよ!!」

(クイ…ゴク…)

ゆみさんは、生ビールを一気にのみほしたあと大ジョッキを頼んだ。

「ヘイ、生大一丁〜」
「おおきに〜」

ゆみさんは、ナンコツの串カツにオリバーソースをつけながらゆらさんに言うた。

「ゆら!!」
「なんやねん〜」
「それともうひとつ忘れていることがあるわよ!!」
「えっ?」
「あんた!!ポムじいさんに対してもケチよばわりしたよね!!」
「えっ?おぼえてへん〜」
「ドアホ!!せやけんあんたはアカンのよ!!」
「ゆみねーちゃん、そないに目くじらたてんでも…」
「ますますはぐいたらしいわね!!ゆりねーちゃんとゆかねーちゃんはアメリカ合衆国の医大をトップの成績で卒業したあとアメリカ合衆国の医師免許を取得した…ゆいねーちゃんもアメリカ合衆国の女子医大をトップの成績で卒業してアメリカ合衆国の医師免許を取得した…ゆなねーちゃんは、パリ〜ロンドン〜ローマ〜ニューヨークでファッションデザイナーの勉強をした…うちは、大手食品会社の商品開発のお仕事をしたのよ…ゆきは事情があるからなんも言わないけど…ゆらはなんやねん!!…専業主婦で蔵本の家の床の間にかざられた…ダンナが単身赴任中であることを利用して、グータラな暮らしを送っている…ゆらはなにを考えているのよ!!」
「ゆみねーちゃん…」
「あんたはなんで高校の家政科へ行ったのよ!?」
「行きたい大学がなかったからえらんだ…」
「せやけんあんたはアカンのよ!!もういいわよ!!」

思い切りブチ切れたゆみさんは、サイフの中から一万円札2枚を出したあと店から出ようとした。

「2万円置いといたから…うちの分もはろといてや…」

ゆみさんは、ゆらさんを怒鳴りつけたあと店から出ていった。

ゆらさんは、ものすごくつらそうな表情を浮かべながらゆみさんの背中を見つめた。

(ブロロロロロ…)

時は、夜9時半頃であった。

またところ変わって、近鉄・大阪メトロの日本橋駅《にっぽんばしえき》の付近の交差点にて…

交差点付近の道路と並行して通っている阪神高速道路堺線に自動車がたくさん走行していた。

この時、哲人《てつと》が一人ぼっちでポツンと立ったいた。

哲人《てつと》は、大番頭《おおばんと》はんの家から飛び出したあとふらついた足取りであちらこちらをうろついていた。

その間に、きょうは何月何日であるかなどをきれいに忘れていた…どうしょうもないドアホになった。

歩行者用の信号機が青になった。

哲人《てつと》は、ふらついた足取りで横断歩道を渡り歩いた。

哲人《てつと》は…

こんな状態でいいのか…

こんな状態で生きていたら…

将来、どうなってしまうのか…

…と言うことに気がついてないので…

もうアカンだろうな。
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