私が一番近かったのに…
「それじゃ、早速行ってみよう」

またもや頭で考えるよりも先に、身体が勝手に動いてしまった。
ホテルの中は広いため、迷子になった。これじゃ、来た道を戻るのも一苦労である。
途方に暮れ、諦めかけたその時、慌てて後から愁が追いかけて来てくれた。

「…ったく。お前は考えなしに動く癖をどうにかしろ。
今朝もホテルを出たところまではよかったが、その後は全く何も考えてなかっただろうが」

真剣に叱ってくれた。これは絶対に茶化してはならない雰囲気だ。
真面目に反省した。この旅行で私は、愁に迷惑ばかりかけている。
これじゃ、愁に呆れられても仕方がないと思った。

「ごめんなさい。次からは気をつけます」

もし、愁に同じことをされたら、私はかなり心配すると思う。
何かあったらどうしよう?と、心臓がはち切れそうになるかもしれない。
改めて思い知らされた。私には愁がいないと何もできないということを…。

「謝らなくていいから、もう少し落ち着いて行動してくれ」

掴まれた腕を引き寄せられ、正面からそっと優しく抱きしめられた。

「時間があるようでないって幸奈はさっき言ったが、確かにそうだ。
でも、全部一気にやろうとするな。まだ時間はたっぷりあるんだから」

今日の私は最低だ。自分の気持ちばかり優先してしまい、愁の気持ちなど考える余裕すらなかった。
この旅行を計画してくれたのは愁。同じように楽しみにしてくれていて。そして、ここに私を連れて来てくれた。
忘れていた。二人で楽しむということを。
そのことに気づかせてくれた愁に、感謝しないといけないなと思った。
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