私が一番近かったのに…


           ◇


夕飯まで少し時間に余裕があったので、二人であちこち見て回った。
でも、長時間のバス移動で疲れていたので、早めに切り上げることにした。
今日はまだ一日目だ。それにまだ明日もある。
しかし、三日目には帰らなくちゃいけないので、バスの時間もあるため、ゆっくり見て回ることはできない。
なので、明日またゆっくり見て回ることになった。

いつもと違う街並み。誰も私達のことを知っている人はいない。
観光中、自然と手を繋いだり、腕を組んだりもした。
いつもなら懸念してしまうが、今回は素直に受け入れた。
楽しければ楽しいほど、夢から覚めないでほしいと願ってしまう。ずっとこの夢から覚めなければいいのに…。

そう思ったのも束の間、私は肝心なことを忘れていた。この男が野獣であるということを…。
愁のことだから、一緒にお風呂に入ろうと言うに違いない。
お風呂付きの部屋を選んでいる時点で、気づけばよかったものの、今更もう遅い。
もし、そういう展開になったら、もう諦めることした。

そして私達は今、ホテルに戻ってきて、寛いでいる。

「はぁ…。疲れたね。もう寝たい」

何気ない一言だった。ここまでは普通の会話だったと思う。

「あぁ。そうだな。なぁ、夕飯はどうする?」

たくさん歩き回ったため、お腹が空いていた。
若干、眠気が襲ってきてはいるが、今は空腹の方が勝っている。
早く夕飯が食べられるのであれば、今すぐにでも食べたい。

「ちょうど今、お腹も空いてるし、そろそろ夕飯が食べたいかな。
でも、夕飯はどこで食べられるの?」

ホテルといえば、そのホテル専用のレストランや、ルームサービスなどがある。
希望はレストランのディナーが食べたい。
でも、激安旅行のプランで来ている私達には、そんな余裕などあるはずもなく…。
愁と二人で美味しいものが食べられれば、それだけで充分幸せだ。

「んー、そうだな。確かこのホテルのどこかに、レストランがあったはずだ。そこで夕飯にしよう」

本当にいいのかしら?レストランでお食事しても。
でもせっかくだから、レストランでお食事をすることにした。
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