私が一番近かったのに…
「触られたところって、どこを触られたの?」

目が怖かった。どうやら深い意味に捉えてしまったみたいだ。
私の言い方が回りくどかったせいで、まさか勘違いさせることになるなんて思わなかった。
ただ、誘いたかっただけなのに。結局、誘いには気づいてもらえなかった。

「触られたのは肩だけ。それ以外は何も触られてないよ」

まずは愁を安心させたかった。
このままでは怒り狂って、何をするか分からなかった。

「そうか。それでも許せない。幸奈の肩に触れやがって…」

触ったというだけで、愁にとっては許せないみたいだ。
それもそうか。あの先輩が相手だから。

「畜生。絶対に触らせたくなかったのに。触っていいのは、俺だけなのに…」

どうして愁だけなの?私のこと、本当はまだ好きなの?

「幸奈…」

私の名前を呼びながら、頬にキスをしてくれた。そのまま首、鎖骨にキスを落とした。
いつもより強めなキスだった。私はそのキスに簡単に蕩けてしまった。

「ごめん。跡つけちゃった。もう我慢できない。我慢しないとダメなのに…」

我慢なんてしてほしくない。もっと私に触れてほしい。私を求めてほしい。
今なら言える。もう一度、勇気を振り絞って、お願いしてみた。

「我慢なんてしないで。もっとして…」

さっきとは違い、ストレートに言葉にしてみた。
もう何ふり構っている余裕なんてなかった。私は必死だった。

「いいのか?あの時、先輩に酷い言葉を浴びせられてただろう?大丈夫なのか?怖い思いしたのに…」

好きな人に求められるのと、何も思っていない男に求められるのとでは違う。
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