私が一番近かったのに…
「ねぇ、今日はこのまま私が攻めてもいい?」

「いいよ。やれるところまでやってみなよ。見守っててやるからさ」

「分かった。頑張ってみる」

どこまでやれるか分からないけど、愁のことをもっと知りたいので、とりあえず、挑戦してみることにした。


           ◇


あまり慣れていないせいか、上手くできなかった。

「ごめんな。無理させすぎたよな?」

「大丈夫だよ。気にしないで…」

「いや、気にする。気にさせてくれ」

こんなに必死な愁は初めて見た。私のためにここまで必死になってくれる姿に、私は更にときめいた。

「決めた。もう絶対にこんなことはしないと誓う。
だから、無理な時は無理だって、はっきりと言ってくれ…」

悲しい目をしていた。どうやら愁は、何でも受け入れる私に怒っているみたいだ。

「ごめんなさい。でも、無理じゃなかったよ……」

相手が愁だから、私は全てを受け入れることができた。
私が一番辛いのは、愁に必要とされなくなることだ。

「もっと自分を大事にしてくれ…っていう意味だよ。
そういうところが、いつまで経っても心配なんだ」

愁に抱きしめられた。優しく頭を撫でながら…。

「約束してくれ。ちゃんと抵抗してほしい。無茶な要求の時は絶対に……」

今まで私は、自分を犠牲にして、愁に奉仕してきた。
愁の気持ちは充分、私に伝わった。愁がいなければ、気づきもしなかったと思う。
改めて自分をもっと大事にしなければならないことに気づかされた。

「私のために叱ってくれて、ありがとう」

更に強く抱きしめられた。あまりの力強さに、また息苦しくなった。

「ん゛…、ぐるし゛い……っ」

「ごめん。今すぐ離れるな」

慌てて愁が離れた。離れた瞬間、急に寂しさが込み上げてきた。
< 190 / 346 >

この作品をシェア

pagetop