私が一番近かったのに…
「幸奈、待って…」

今度は愁がちゃんと追いかけてきてくれた。
でも、本当に追いかけてきてほしかったのは、今じゃないのに…。

「何?どうかしたの?」

もしかして、そろそろ私の気持ちに気づき始めたのかな?

「あのさ、今日は一緒に帰れるか?」

がっかりした。愁には悪いけど、そんなこと?って思った。
これは一緒に帰るべきなのか、それとも帰らないべきなのだろうか。

「…いいよ」

結局、一緒に帰る道を選んだ。誰よりもあなたの傍に居たかった。
あなたの傍を離れることなんて、まだ想像すらできなかった。
でもこれ以上、一緒に居ても辛いだけだと思う。愁以外にももっと素敵な男性なんて、いくらでもいるはずなのに…。
どうして、あなたをこんなにも好きなのか、自分でもよく分からなかった。

「よかった…。それじゃ、今日は一緒に帰るから、俺を置いていかないでくれよ」

嬉しそうにしていた。今までの私なら、この笑顔にときめいていた。
でも今の私にはただ、胸が苦しいだけだった…。
一緒に帰る道を選択した自分に後悔した。
それでも、まだ心の中のどこかで、好きな気持ちを消せない自分がいて。とても複雑な気持ちで、胸がいっぱいだった。
今日ほど、早くバイトが終わってほしいと願う日はなかった。
この時の私は、まだ幸せな方だったと、後で思い知ることになるのであった。
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