私が一番近かったのに…
「大平、岩城の代わりに仕事を頑張ってくれ」

もちろん、そのつもりでいたので、フォローに回れるよう、既に動き始めていた。

「はい、分かりました。任せてください」

すぐには戻ってこれないであろう。こういう時こそ、助け合いだ。
私が困っていた時、愁にはたくさん助けてもらった。今こそ、やっとその恩を返せる時だと思う。
今までの恩義をゆっくりでいいから、少しずつ返していきたい。この際、昨日のことは一旦忘れよう。仕事に私情を持ち込んではダメだ。せめてバイト中だけは忘れて、仕事に打ち込もうと思う。

「助かる。それにしても、岩城も大変だな」

岩城も…って、どういう意味だろうか。
他にも何か大変なことがあるのだろうか。

「そうですね。大変そうですね」

「まるで他人事だな。お前もクビになった奴と色々あっただろうが」

どうやら、私が含まれていたみたいだ。
ようやく、副店長の言葉の意味を理解することができた。

「確かに大変でしたよ。もう過去の話ですが…」

忘れることなんてできない。
それでも過去と言えるのは、隣で愁が献身的に支えてくれたからだと思う。

「岩城もあんな面倒くさい女とは別れて、ささっと他の女のところへいけばいいのに…」

その意見には、私も副店長に同意する。
どうして、愁はまだ付き合っているのだろうか。一ヶ月以上も会っていなかったというのに。
それに、彼女となかなか会えなかったのは、私のせいでもある。
先輩とのことを心配して、毎日会いに来てくれていたので、彼女に会う時間がなかったのかもしれない。

「当人達にしか分からない、何かがあるんだと思います。
他人から見たら、そうなのかもしれないですが…」
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