私が一番近かったのに…
「仕事中に来るなと、再三注意しただろう。どうして、ここへ来たんだ?」

これ以上、目立つのを避け、愁は声のボリュームを下げた。
彼女はそんなのお構いなしに、ずっと声が大きいままだ。

「だって愁くん、なかなか会ってくれないから。最後に会ったの、もう一ヶ月以上も前だよ?」

一ヶ月以上前ってことは、クリスマス以来、会っていないということになる。
先輩との事件があったのは、お正月が終わり、少し経ってからのことだ。
一月はなかなかシフトに入ることができず、もうすぐバレンタインの時期が訪れようとしている。
前に先輩と話していた時、もうダメかもしれないと言っていた。
だから愁は、あまり彼女と会っていなかったのかもしれない。
だとしたら、このまま自然消滅を狙っているのか、或いは他に好きな人ができたのか…。
頭の中がゴチャゴチャしている。次から次へと新しいことが起き、胸の痛みが増していく。

「すみません。俺、一旦、抜けても構いませんか?」

休憩が終わり、店内へと副店長が戻ってきた。
お店の中の状況をいまいち把握できてはいないが、危機迫った愁の表情を見て、察したようだ。

「構わない。なるべく手短にな」

店内がざわついていた。このざわつきを収めるためなら、この際、愁一人が抜けることは支障がないと判断したのであろう。
寧ろこのまま、無視し続けて仕事を続けている方が、支障をきたすことになる。私が同じ立場なら、副店長と同じ判断を下したと思う。
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