私が一番近かったのに…
先程もどさくさに紛れて、そのようなことを言っていた。そんなに私と身体の相性がいいってことなのだろうか。
しかし、これは完全に身体目当てだ。この先に良い未来なんて存在しない。
副店長に背中を押されて、完全に浮かれモードに突入していたが、冷静になって考えてみたら、現実なんてこんなものだと思い知らされた。

「そっか。とりあえず、落ち着いて。愁は私と彼女を重ねて見てるから、彼女への不満が膨らみすぎてるんじゃないかな」

どんなに見た目が大人っぽくても、中身はまだまだ子供っぽいところがあるのが年下の彼女だ。
私だってそう。まだ大人にはなりきれていないところがたくさんある。現に副店長からは、ガキだと言われたばかりだ。
但し、彼女の場合は、子供っぽいという言葉だけでは片付けられない点も幾つかある。
それ以前に、中身に問題がありすぎる。愁はあまりにも子供すぎる言動に、呆れてしまったのであろう。
そこで身近な存在の私と照らし合わせてしまい、余計に不満が募ってしまったのかもしれない。
だとしたら、私とセックスをしなくなれば、問題は解決する。
もちろん、私としては寂しいが、愁のためを思うのであれば、そうするしかない。私も愁を苦しめている原因の一人だから。

「それも一理ある。幸奈はいつでも俺の話を聞いてくれるけど、彼女は全く聞いてくれない。
そういう小さな積み重ねが、気づかないうちに幸奈と比べていたことは認める」

愁の中で私の存在が大きくなりすぎていたんだ。それはただ、いいところだけを切り取っただけに過ぎない。
それもそうか。自分が付き合っている彼女より、身近に良いところをたくさん持っている人がいたら、比べてしまうものだし、更に身体の相性もよければ、完全に身も心も動いてしまうものだ。

「でも俺は、お前とのセックスは続けるからな。どうせ、お前は俺に迷惑かけたと思って、セックスするのを止めようとか言い始める気なんだろ?」

私の心は完全に読まれていたみたいだ。
やっぱり、愁には適わない。何でもお見通しだ。

「だって、私としなければ、彼女と相性が悪いなんて感じることもなかったでしょう?だから、私にも少し責任があるんじゃないかなと思って…」

これは二人の問題だ。それでも、少しばかり胸が痛んだ。
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