私が一番近かったのに…
「そうだったんだ。あんまりセックスはしてないって話は聞いてたけど、避妊をちゃんとしなかったこと以外にも原因があるの?」

踏み込んだ質問をしてみた。ここまできたら、何でも恥ずかしがらずに、聞いてやる!という、強気な姿勢で挑んだ。

「避妊しなかったのは、彼女としてる時、俺、全然気持ちよくなくて。
避妊しない方が気持ちよくなれるか試したくて、試した。
もちろん、彼女からは叱られたし、余計に束縛される回数が増えたけど」

「え?どうして、束縛する回数が増えちゃったの?」

「私のこと大事にできないってことは、他に女がいるかもしれない。
他の女のところにいってほしくないから、束縛しちゃうって言われた。
俺はそれがきっかけで、分からなくなった。この子のこと、本当に大事に想っているのかなって」

人を好きになることって、簡単なことじゃない。何度だって迷うし、たくさん悩む。
愁は初めての感情に、戸惑っているのかもしれない。
これが好きって感情だと、気づいていないみたいだ。

「正直、二人の問題だから、他人がとやかく言うのは憚られるけども、愁の気持ちを聞いて、私が思ったことは、」

本当は言いたくない。このまま何も言わずに、気づかせないで、私に振り向かせたい。

「愁はきっと息苦しかったんだよ。彼女が自分の話を聞いてくれないことに。
それでも彼女が好きで、たくさん悩んだんじゃない?」

そうだったのかと、納得する顔でもするかと思いきや、悲しい傷ついた顔をしていた。
彼女のことを傷つけた時よりも、悲しそうな顔だった。

「幸奈の言う通り、俺はずっと彼女に、自分の話を聞いてほしかっただけなのかもしれないな」

あの一瞬だけ見せた悲しげな表情はすぐになくなり、いつも通りの愁に戻っていた。
あれは一体、何だったのだろうかと、思う余裕すらないくらいの早さで、瞬時に愁は表情を切り替えた。

「どんなに彼女が俺の話を聞いてくれたとしても、一つだけ問題が生じる」

「問題って?何か他にも不満があるの?」

「どうしても身体の相性だけは、今後もついて回ることだから。
幸奈が本当に一番気持ちいいから、幸奈には勝てないんだよ」
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