私が一番近かったのに…
あんなに美味しそうに食べる愁の姿を見れたので、もうこれ以上の幸せはない。

「まだ休憩が終わるまで時間があるから、少しばかり外に出ないか?」

真冬の寒空の下ではあるが、ここではゆっくり話せないので、二人っきりで話せる手段としてはこれしかない。
寒いのは苦手だが、二人っきりになれるのであれば、そんなのどうだってよかった。

「いいよ」

「よし。それじゃ、外に出よっか」

少し抜け出して、散歩することにした。
一応、同僚には外に出ると伝えて。

「こんなふうに抜け出して散歩するのって、初めてだよな」

短い休憩時間なので、早々抜け出すことはできない。
一分一秒だって、時間を無駄にしたくない。

「そうだね。初めてかも。なんだか夜のお散歩も悪くないね」

肌を掠める寒い空気が案外、悪くないと感じる。
でも、そんなのは束の間。すぐに魔法が解けてしまった。

「愁。話があるの」

愁の彼女が目の前に現れた。歩いてものの数分。このタイミングで…?
さすがに、タイミングが良すぎるでしょ……。

「愁、私は一回戻るね」

居た堪れない気持ちになった。さすがにこの場に居られなかった。
彼女が愁に会いに来たのは、やり直したいと伝えるためであろう。
愁は何て返事をするのだろうか。やっぱり二人は、別れないのかもしれない。
頭の中で色々と考えてしまう。考えたって仕方がない。だって、私と愁はただの友達だから。
身体の関係はあっても、まだ何も始まってなどいない。割って入れるほどの勇気はない。
それに私が間に入ると、話が余計にややこしくなり、自体の収集がつかなくなってしまうだけだ。
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