私が一番近かったのに…
「気を遣ってくれてありがとう。でも、愁に差し入れを渡しに来ただけだから、そんなに気を使わなくても大丈夫だよ」

彼女に愁が好きであることを打ち明けたことはない。
しかし、私の気持ちを知っているということは、結局、周囲に気持ちがバレているみたいだ。
どんなに気持ちを押し殺しても、想いは溢れ出てしまうものなのかもしれない。完全に気持ちを隠すことなんて不可能みたいだ。
彼女がいると知った上で、皆が私の背中を押してくれる。
とても有難かった。この後のことを考えると、かなり勇気をもらえた。

「はいはい。分かったよ。ほら、早く行ってきな」

お言葉に甘えて、愁の元へとお邪魔することにした。

「愁、お疲れ様」

待ってましたと言わんばかりの顔。
どうやら、私が来るのをずっと待ってくれていたみたいだ。

「来てくれてありがとう。ずっと待てた」

私を待っていたわけではなく、お弁当を待っていたという意味だと思う。勘違いしたらダメよ、私。

「そうだったんだ。それじゃ、これ。どうぞ」

「いただきます…」

渡した瞬間、目が輝いていた。相当、お腹が空いていたみたいだ。美味しそうな表情でバクバクと食べている。

「美味しい…!どれも美味しいが、特に卵焼きが美味しいな」

得意料理の卵焼きを褒められて、とても嬉しかった。また更なる自信へと繋がった。

「美味しかった。ごちそうさまでした」

あっという間になくなってしまった。想像以上に食べるのが早かった。

「お粗末様でした。美味しかったみたいでなによりです」
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