私が一番近かったのに…


           ◇


「…んん……」

身体が気怠い。こんな感覚は初めてだ。
起き上がろうとした瞬間、腰が鉛のように重くて、上手く起き上がれなかった。

「おはよう。初めてだったのに、昨日は激しくしてごめんな」

隣から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
ゆっくり横を見ると、裸の愁が目の前に居た。

「えっと…、これは……?」

「まさか覚えてねーの?それはねーだろ。俺ははっきりと覚えてんだけど」

その言葉でようやく思考が追いついた。昨日はバイトが終わって、いつも通り一緒に帰宅している途中、私から愁に迫り、こういう関係になった…。

「お、覚えてるよ!起きたばっかりだったから、頭がぼーっとして、上手く働かなかっただけ」

起きたての脳には、どうやら少し刺激が強すぎたようだ。
現実をまだ上手く受け入れられずにいた。まさか愁とあんなことをしてしまったなんて……。
今、愁の顔をまともに見れない。お互いに全裸というこの状況…。
どうして、服を着て寝なかったのだろうか。いくら疲れ果てて眠ってしまったとはいえ、この状況はとても気まずい。
行為中は特に意識していなかったが、終わった後の方が何十倍も恥ずかしいということを、私は知らなかった…。
それに今、愁は私のことをどう思っているのだろうか。気になって仕方がなかった。

「ならよかった。忘れられたんじゃないかって内心、焦った」

忘れるなんてできるわけがない。あんなに激しく求め合ったのだから。身も心も強く愁が刻み込まれている。

「そんなわけないでしょ。起きたらこんなに腰が痛いんだから」

「大丈夫か?…って、大丈夫なわけないか」

「立てない。痛い…」

「とりあえず、大学はサボるか。
そんでもう一回したら、腰が痛いだけじゃないかもよ?」

そう言って、愁は私の耳を甘噛みした。
敏感な私はそれだけで反応してしまった。

「ひゃっ…、いきなり耳噛まないで…っ!」

「なんで?ねぇ?いいだろう?」
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