私が一番近かったのに…
「それにしても酷い話だ。俺が幸奈と一緒に居て何が悪いんだ」

愁は彼女が他の男性と仲良くしていても嫉妬しないのかな?
彼女の気持ち、分かってあげられないのかな?愁が嫉妬しない人なのかな?

「まぁまぁ…。追々話し合えばいいんじゃない?」

一瞬、愁の顔が引きつった。私に共感してもらえなかったことが悲しそうに見えた。

「それもそうだな。話し合ってみるよ」

その話はそのまま有耶無耶に終わり、お互いにこれ以上何て言っていいのか分からず、少しの間沈黙が流れた。
その直後に突然、愁の携帯が鳴った。愁は携帯を見て焦っていた。

「急な話で申し訳ないんだが、今日、幸奈ん家に泊めてもらえないか?」

急な話にも程が過ぎる。どうしたらいいの?

「いいけど、どうして…?」

「それがな今、彼女が俺の家の前まで来ているらしくって。こんな状況見られでもしたら面倒だろう?それに彼女を帰すわけにもいかないからさ。
だから、友達ん家に泊まりに行ってるっていう口実が欲しいんだ。頼む。今晩だけでいいから…」

口実だって構わない。彼女よりも愁を独占できるのだから。

「仕方ないな。いいよ。でも、今回だけだよ?」

「ありがとう。本当に助かる」

しまった…。今回だけなんて言わなければよかったと後悔したが、今更もう遅かった。

「このお礼は必ずするから」

お礼をされるようなことはしていない。
寧ろ大切な彼女を傷つけてしまっている、私の方が謝らなくてはならない立場だ。

「いいの。気にしないで。私は私のやれることをやっているだけだから」

友達として傍に居られるのが私の特権だ。それ以上を望めてはならない。
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