私が一番近かったのに…
中山くんには申し訳ないことをしたなと、一人で反省をしていた。
あれじゃ却って、彼が気にしてしまうかもしれない。次に会った時に、もう一度謝ろうと思う。

「はぁ…」

思わず溜息が漏れてしまった。ダメダメ!こんなの誰かに聞かれでもしたら…。

「おい!大丈夫か?」

え?もしかして今の溜息、誰かに聞かれてたの?!
嘘でしょ?恥ずかしい。この場から一刻も早く消えたい。
あまりの恥ずかしさに、顔を下に向けてしまった。少しでも顔を隠したいと思った。

「おーい?幸奈、俺の声が聞こえてるか?」

あれ…?でもこの声、聞き覚えがある。もしかして…。
恐る恐る顔を上げてみた。すると目の前に現れたのは今、ここにいるはずがない人だった…。

「愁…?どうしてここに居るの?今日はお休みなはずじゃ……」

「確かに俺は今日休んだけど、暗い夜道をお前一人で歩かせるのは心配だから、幸奈のお迎えに来た」

どうして、そんなに優しくしてくれるの?今朝、私を置き去りにしたくせに…。
私は優しくされたいわけじゃない。私が欲しいのは愁の気持ちだ。
気持ちがないなら、私に優しくしないでほしい。勘違いしてしまいそうになるから。

「帰るぞ。家まで送る」

という合図と共に、愁は足早に歩き始めた。
でも、私は愁の歩幅に合わせられなかった。愁の歩くスピードが早すぎるから。これじゃ追いつけない。

「待ってよ、愁…」

慌てて愁の後を追いかける。やっと追いつくことができたが、結局、半歩後ろを歩く形になってしまった。
なんとなく気まずい空気を察知してしまい、いつもみたいに隣を歩くのを躊躇した。

「おい、幸奈。危ないから、俺の隣を歩け」

ようやく愁が後ろを振り返ってくれた。
そして腕を掴まれた。強引に隣へと並ばされた。
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