私が一番近かったのに…
私に彼氏ができたら嫌だとか、傍に居てほしいとか、言葉そのもの自体に深い意味などはなく、全て友達として向けられた言葉に過ぎない。
そんなことはとっくに分かっていたはずなのに、勝手に一人で思い上がって、勘違いしてしまった自分がとても恥ずかしい。

「お前はそうやって、何でもかんでも一人で抱え込もうとするから、俺は心配なんだ。
お願いだ。何かあったらすぐに俺を頼ってくれ。それだけは覚えておいてほしい」

私だって、一人で抱え込みたいわけじゃない。私が抱えている悩みが、気軽に誰かに話せる内容ではないから。
だから、一人で抱えて悩む以外に、選択肢がないだけだ。

「うん。分かった。そうするよ」

言いたいことは全て飲み込み、その場を丸く収めるために仕方なく、私は首を縦に頷くことしかできなかった。
しかし、私の心は追いつけず、絡めていた腕をそっと離した。繋いでいた腕の感触をすぐに払いたくなった。
本当に自分勝手だと思う。私の方から腕を絡めたというのに…。
今の私は愁の傍に居ると、痛いほど愁のことを好きだと思い知り、余計に惨めな想いをする。それがとても辛い。
だから私は逃げた。これ以上辛い思いをしないために。

「…おい、幸奈。どうした?やっぱりお前、変だぞ?」

「ごめん。ぼっとしてたら、ついうっかり腕を離しちゃった…」

私は嘘を吐くのが下手だ。いくらなんでもさすがに、愁でも嘘だと気づくであろう。

「なんだ。それならよかった。急に離すから不安になっちまっただろうが。…ほら、早くまた俺の腕に掴まれ」

それは私の役目ではない。そこは彼女だけの特別な場所だから。

「…えっと……」

「今更躊躇ってももう遅い。お前は俺の腕に絡めてもいいんだよ」

躊躇う私を無視して、半ば強引に腕を組まされた。
いつだってそうだ。愁は私の気持ちなんてお構いなしで。勝手に自分のペースに私を巻き込む。

「黙ってこうしてればいいんだよ。俺から離れるな。傍に居ろ」

もう私は気持ちを抑えられそうになかった。
どう考えても、おかしいのは愁の方でしょ?私のことなんて友達としか思ってないくせに、思わせぶりな態度ばかり取らないでよ。
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