私が一番近かったのに…
きっと愁は思ったことをすぐに感情に表せてしまう、素直な人なんだと思う。
それに比べて、私はいつも想いを閉じ込めてしまってばかりいる。
だから私は、愁にフラれてしまったのかもしれない。

「傍に居てくれるんだろう?だったら、お前が傍に居てくれなきゃ意味がねーだろうが。
…ったく、それぐらい気づけよ。バーカ」

バカなのは愁の方だ。私の気持ちにもっと気づいてよ。私がこんな言葉で満足するとでも思ってるの?一番欲しいものを早く私に頂戴。
なんて言えるはずもなく、私はただ黙って隣を歩くことしかできなかった。
今は頭の中がグチャグチャで、上手く整理できていない状態だ。
どうして私は、勢いだけで傍に居るなんて言っちゃったんだろう。一度発言したことは、もう取り返しがつかないというのに。

「ごめん。気が利かなくて」

「お前は何も悪くないんだから、謝る必要はない」

愁、違うの。今、私が謝ったのは、私が何も考えずに、傍にいるよなんて、返事をしてしまったことに対しての謝罪なの。

「うん。そうだね。私が謝る必要はなかったね」

その場を誤魔化すことしかできなかった。
そもそも端から誤解を解くつもりなどなかったが。

「幸奈は周りのことをよく見てる。だからこそ、周りに気を遣いすぎて、時々自分のことだけが疎かになってる。
俺はそれが心配なんだ。もう少し自分のことを大事にして欲しいって思ってる」

どうしてそんなことを今、このタイミングで言うの?傍に居てほしいんじゃなかったの?彼の言葉はまるで、私を突き放しているかのように感じた。
傍に居るのが辛くなったかと思いきや、相手から突き放された途端、急に怖くなった。
やっぱり、まだ愁の傍を離れたくない。離れるなんてできないと思った。

「本当に無理すんなよ。もっと俺を頼れ」

悩みの種が張本人とは言えない。愁のことで悩んでいなければ、一番に頼ってしまいたいくらいなのに。
いっそのことそう言ってしまいたいが、心の中だけに留めておいた。

「分かった。これからはもっと頼る。私はもう大丈夫だから、安心して」

まだ疑いの目を向けられたままだ。
まるで心の中を読まれているかのように感じた。
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