三日月が浮かぶ部屋で猫は ~新米ペットシッターは再会した初恋の彼の生涯専属を求められる~
「うちに引っ越して来たら?」
「え……」
「専属になるの、ダメじゃないんだろう?」
尚仁は笑顔で沙耶に言う。
「一生離れたくない」
これではもうプロポーズだ。
どきどきして尚仁を見た瞬間、沙耶ははっとした。
彼の後ろで、キャットタワーのクレオパトラが足を滑らすのを見てしまった。
「危ない!」
慌てて飛び出した沙耶は、スリッパのせいで足がすべって転ぶ。
猫は彼女の背中に着地した。
沙耶の口から悲鳴ともうめきとも言えない声が漏れた。
クレオパトラはなにごともなかったかのようにまたキャットタワーに登る。
「大丈夫?」
尚仁が助け起こそうとしてくれる。沙耶は体の向きを変え、差し出された手をとる。
が、クレオパトラがキャットタワーから彼の背に飛び乗り、バランスを崩した尚仁が沙耶に向かって倒れて来る。
「あ!」
「――!」
沙耶は思わず目をつむった。
だん、と耳元で大きな音がしたが、衝撃はこなかった。
尚仁は両腕を沙耶の顔の両側について、なんとか倒れこまずにとどまっていた。
クレオパトラはまたキャットタワーにのぼり、何食わぬ顔で月のキャットステップに座る。その顔はまるでにやりと笑っているようだった。
沙耶は唖然としてその姿を見つめる。
「大丈夫?」
尚仁の声に、顔を向ける。
「大丈夫……」
それ以上何も言えなかった。彼の顔が近くて、沙耶は目のやり場に困って顔をそらした。押し倒されたみたいな体勢がまた鼓動を早くさせた。彼の両腕が自分の顔のすぐそばにあり、彼の体がすぐそばにある。
「もっと早く言えばよかった」
彼がそう言うから、沙耶はまた目を彼に戻す。熱い視線が彼女を捕らえる。もう、目が離せなかった。真剣な顔に、沙耶はただ熱く見つめ返す。
「沙耶……好きだ」
彼の温かな右手が沙耶の頬を包む。
「私も……」
それ以上は言えなかった。
尚仁の顔がゆっくりと近付き、沙耶は目を閉じた。
尚仁が熱く情熱的に沙耶の唇をむさぼる。
クレオパトラは月に座って静かに2人を見下ろしていた。
終
「え……」
「専属になるの、ダメじゃないんだろう?」
尚仁は笑顔で沙耶に言う。
「一生離れたくない」
これではもうプロポーズだ。
どきどきして尚仁を見た瞬間、沙耶ははっとした。
彼の後ろで、キャットタワーのクレオパトラが足を滑らすのを見てしまった。
「危ない!」
慌てて飛び出した沙耶は、スリッパのせいで足がすべって転ぶ。
猫は彼女の背中に着地した。
沙耶の口から悲鳴ともうめきとも言えない声が漏れた。
クレオパトラはなにごともなかったかのようにまたキャットタワーに登る。
「大丈夫?」
尚仁が助け起こそうとしてくれる。沙耶は体の向きを変え、差し出された手をとる。
が、クレオパトラがキャットタワーから彼の背に飛び乗り、バランスを崩した尚仁が沙耶に向かって倒れて来る。
「あ!」
「――!」
沙耶は思わず目をつむった。
だん、と耳元で大きな音がしたが、衝撃はこなかった。
尚仁は両腕を沙耶の顔の両側について、なんとか倒れこまずにとどまっていた。
クレオパトラはまたキャットタワーにのぼり、何食わぬ顔で月のキャットステップに座る。その顔はまるでにやりと笑っているようだった。
沙耶は唖然としてその姿を見つめる。
「大丈夫?」
尚仁の声に、顔を向ける。
「大丈夫……」
それ以上何も言えなかった。彼の顔が近くて、沙耶は目のやり場に困って顔をそらした。押し倒されたみたいな体勢がまた鼓動を早くさせた。彼の両腕が自分の顔のすぐそばにあり、彼の体がすぐそばにある。
「もっと早く言えばよかった」
彼がそう言うから、沙耶はまた目を彼に戻す。熱い視線が彼女を捕らえる。もう、目が離せなかった。真剣な顔に、沙耶はただ熱く見つめ返す。
「沙耶……好きだ」
彼の温かな右手が沙耶の頬を包む。
「私も……」
それ以上は言えなかった。
尚仁の顔がゆっくりと近付き、沙耶は目を閉じた。
尚仁が熱く情熱的に沙耶の唇をむさぼる。
クレオパトラは月に座って静かに2人を見下ろしていた。
終


