天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 気を取り直して歩き出し、嵐さんが言っていた奥の場所を目指して歩きだす。

 途中で、目的のお墓の前にひとりの女性が手を合わせていることに気がついた。

 花は新しいものに変えられ、線香の細い煙が空に立ちのぼっている。

 あれは……。

 目を細めて女性をよく見ようとしたその時、合わせていた手を下ろした女性がこちらを向いた。

 胸まである緩いパーマヘアが風にたなびき、エキゾチックで大きな瞳が私をとらえる。

 前に進もうとしていたはずの足が踏み出せなくなった。

「ノアさん……?」

 小さく呟いたまま体を強張らせる私に対し、彼女は大股で歩み寄ってくる。

 今、彼女はおそらく嵐さんのご両親のお墓の前にいた。目を閉じて両手を合わせ、彼らになにを伝えていたのだろう。

 胸の奥でまた嫉妬に火が付くのを感じたが、それを押し隠し、目の前までやってきた彼女に頭を下げる。

「こんにちは……」

 彼女から返事はない。いまだに私と嵐さんの結婚が納得できず、敵意を抱いているのだろうか。

 顔を上げる直前、ノアさんがフンと鼻を鳴らすのが聞こえた。

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