天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 お墓参り当日の空は綺麗な冬晴れだった。

 私は前日まで遅番、そして嵐さんはヨーロッパ方面への長距離乗務をこなしていたため、朝はゆっくり起きて昼前に出発し、ドライブの途中で昼ご飯を済ませた。

 墓地の駐車場に到着したのは午後二時頃。

 お墓は高台の方にあり、階段を上った途中途中に段々畑のように少しずつ建てられている。階段を一番上まで上がりきると、相模湾がよく見えるそうだ。

 ここへ来る前に買った花と線香、ご両親が好きだったというお菓子を持ってしばらく階段を上がっていたら、ちょうど中ほどで嵐さんが「しまった」と声を上げる。

 せっかく持ってきたお墓の掃除道具をトランクに積んだままだったのだ。

「ごめん、俺が取りに戻るから先に行ってて。一番上の左手奥だから、すぐわかると思う」
「すみません、お願いします」

 嵐さんと別れ、ひとりで階段を上る。

 人の気配はなく、風で草木が揺れる音だけが辺りに響いているのが、少し寂しげだ。

「ふう……」

 長い階段を上りきると、少し息が切れた。

 これしきで疲れるなんて情けない……。普段運動不足すぎるのかも。

< 124 / 229 >

この作品をシェア

pagetop