天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「……そうだったのか。ありがとう」
彼女の供えた花や線香を一瞥し、嵐さんがお礼を言う。私は無言で複雑な気持ちに耐えた。
「どういたしまして。それじゃ、私は行くわ。今度のフライトでがっかりされないよう、事前準備しなくちゃ」
「気をつけて帰れよ」
「ありがとう。それじゃまたね、嵐」
ノアさんは私の存在など無視するかのごとく、嵐さんにだけ挨拶をして階段を下りていく。もっとも、挨拶をされたかったとも思わないけれど。
彼女の姿が見えなくなってもしばらく無表情で階段を見つめていたら、嵐さんが私の手を取る。
なんとなく、私たちの不穏な空気を察していたようだ。
「また、なにか言われていたんだろう。ひとりで待たせないで、一緒に車に戻ればよかったな。ごめん」
「嵐さんのせいじゃありません。ただ……」
こんなに胸がざわめくのは、ノアさんが彼に向ける好意に、どうしても友達以上のものを感じてしまうからだ。
彼女はソウルメイトだなんて表現していたけれど、あんな風に独占欲を露わにするのは、恋愛的な意味で私に嫉妬しているとしか思えない。