天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「私が説得すれば、嵐も昔の気持ちをきっと思い出してくれると思うの。家族なんてただのしがらみでしかない。私たちに必要なのは、自由に世界を飛び回るための技術と、同じ志を持った仲間だけだって」
「そんなことありません。家族の存在だってきっと彼の力に……っ」
一触即発のぴりついた空気の中、背後から足音が近づいてきた。
「紗弓、遅くなってごめん。下で管理人に呼び止められて――ノア?」
足音の主は、掃除道具一式が入った手桶を提げた嵐さんだった。私の背後で立ち止まり、ノアさんの姿に目を丸くしている。
これまで私に冷ややかだった彼女の表情が、一瞬にして甘い媚を含んだものに変化した。
「嵐~、ごめんね急に。今年から嵐と同じ会社でパイロットしてますって、どうしてもご両親に報告したくって。お墓の場所はカナダにいる頃に聞いてたし、月命日にたまたま休めたから来ちゃった。ここへ来る前に、私のパパとママのところにも行って来たわ」
私の入り込めないカナダでのつながりを引き合いに出されると、胸が引っかかれたように痛む。
ノアさんはそれをわかっていて、わざとやっているのかもしれない。