天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
ノアを紹介し、連絡事項へ移る。いつも通りのブリーフィングだが、時折CA達からあまり好意的ではない視線が注がれるのを感じた。
理由を考えてみるが、思い当たることと言えばノアとの関係を誤解されたあの噂の件くらいしかない。
まさか、CAたちの間にも噂が広がっているのか……?
思わずため息をつきたくなるが、ここで弁解するわけにもいかない。
冷ややかな視線には気づかないふりをして、ブリーフィングを終えた。
「ちょっと、露木くん」
コックピットへ続く階段を上る前、涼野さんに呼び止められた。
先を歩いていたノアがコックピットへ続く扉の向こうへ消えたのを見計らうようにして、涼野さんが口を開く。
「仕事中にごめんなさい。だけどひとつだけ聞かせて。あなた、紗弓ちゃんを泣かせるようなことしてないわよね?」
どうやら、噂は涼野さんの耳にも入っているようである。どうして当人のいないところで、そんな与太話が広まっているのだろう。
「あり得ません。俺が愛しているのは紗弓ただひとりです」
手短に告げると、涼野さんも納得したように頷く。
「そうよね……。変な話をしてごめんなさい。今日もよろしくお願いします、露木キャプテン」
「こちらこそ頼りにしています」
涼野さんと別れ、コックピットへと戻る。ノアと離陸前最後の打ち合わせをして出発時間が来るのを待った。