病弱な妹に全てを搾取されてきた令嬢はもう何も奪わせない
両親の視線がディオンに送られる。
「え、えぇ……そうですね」
そう言ったディオンも頷いてはいるが、この家のおかしさにもう気づいているのだろう。

耳障りな声はコレットの怒りを増幅させていくだけだった。この二人から愛して欲しいと思っていたコレットが馬鹿だったのだ。
今は激しい憎悪が頭の中を支配する。
いつもならば何も言わないが、それも今日までだ。


「お断りします」

「おい……いま、なんて言った?」

「なん、ですって?」

「絶対に嫌だ、と申し上げているのです」


唖然とする両親を見ながらコレットは続けてこう言った。


「わたくし、今からこの家から出て行きますから」


そうコレットが言った瞬間、父から容赦なく平手打ちが飛ぶ。


「──この恩知らずめがっ!」

「……っ」


コレットは頬を押さえながら父を睨み上げる。
これから自分がどんな目に遭うのか、わかっていたがもう一方的に嬲られるのはごめんだった。

(こんなところで心を殺して生きるくらいなら、外で野垂れ死んだほうがマシよ)

コレットは父の胸元を掴んでいる手首に思いきり爪を立てる。
リリアーヌが粗相をしたパーティーの日から満足な食事を食べていないからか、うまく力が入らない。
だが怒りだけがコレットを突き動かしていた。
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