病弱な妹に全てを搾取されてきた令嬢はもう何も奪わせない
ホワイトアッシュの髪からは、ほんの少しだけ異国の香りがする。
あの四人のことを一瞬で忘れてしまった。
呼吸がしやすくなったことに安堵していた。

暫く抱きしめられたままコレットが顔を上げると、青年の紫色の瞳と目があった。
そのまま数秒、見つめ合っていた。
瞳に吸い込まれてしまいそうになる。

しかし青年の方から視線を逸らされてしまう。
ほんのりと赤く染まる頬を見てコレットは目を見開いた。


「……っ、そんなに可愛い顔で見つめられると困ります」

「可愛い、顔?」

「すみません。コレットが体調が悪い時に僕はなんてことを……」


大きな手のひらは口元を覆うように隠してしまう。
コレットは青年の言葉に心臓がドクリと跳ねる。
まるでコレットのことを好いているような行動だと思ったからだ。

(そんな訳ないわ……わたくしたちは初めて会ったはずでしょう?)

青年が離れたことでコレットは寒さを感じた。
そのことが名残惜しいと思い、コレットが無意識に彼を見上げていると扉をノックする音が聞こえた。
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