かつて女の子だった人たちへ
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「浅見さん、今日はこれやったら上がっていいよ」
「はい。ありがとうございます」
芽里は残った帳簿付け作業を急いでこなす。十条にあるこの会社は、おでん種などの練り物を製造している小さな会社で、年配の夫妻が営んでいる。社員も通いで来ている中年の娘さんと、中年から高齢者ともいえる年齢の女性が五人。会社の事務所の横に大きな台所のような練り物製造工場があり、直売所もついていて近所の人も買いにくる。
芽里はこの会社に事務員として入社した。紹介してくれたのは友人の唯である。
パソコン関係が苦手な社員ばかりの中、一通りできる芽里は重宝されている。まだ契約社員の待遇だが、試用期間の半年を終えたら正社員にとは言われている。試用期間終了は来月の予定だ。
「お先に失礼します」
「はい、また明日ね」
工場を片付けている腰の曲がった社長と奥さん、娘さんに挨拶をし、事務所を出た。
普段はここから埼京線で今の住まいがある埼玉方面に帰るが、今日は池袋に向かう。唯と待ち合わせているのだ。
「お疲れー!」
ふたりでがちゃんとビールジョッキを合わせる。炭火焼鳥の居酒屋は煙たくて騒がしくて、それがまた居心地がいい。