かつて女の子だった人たちへ
クレマチスは神妙な顔で続ける。

『実際、背後霊が見える方や前生……生まれ変わる前の人生ですね、そういったものを感じ取れる、見ることができる方もいて、もうそうなると特技の分野になるんですが、もとは同じと言いますか、この世界を包括する大いなるパワーととらえることができるんです』

雪奈はふっと鼻で笑う。

「あ〜こういうのは意味わかんない。ついていけない」

精神世界について語られると、見ていて『痛々しい』と感じる。その痛々しさが、今の雪奈には少々の優越感を持って見ていられる要因だった。
キラキラが溢れる芸能人やインフルエンサーのSNSが見たいわけではない。意味がわからない世界の意味のわからない人たちにわずかに共感しつつ、圧倒的に意味不明と見下しながら時間つぶしに眺めている。

(歪んでるかもしれないけど、変った世界の人たちの話だから傷つかない)

『大地のパワーがわかりづらい、感じたことがないとおっしゃる方もたくさんいます。当然です』

クレマチスが画面の中でこちらを見つめている。熱心な視線だ。

『ちょっとだけ体験してみたいなら、皆さん、ご自身の手をまずは心を込めて合掌するんです。それから頬に近づけてみて』

雪奈は真似して手を合わせ、それから右手を頬に近づけた。

『温かいと感じるでしょう。それが“気”でありあなたが持って生まれた“大地のパワー”なのです』

やんわりとしたあたたかな空気が手のひらと頬の間にあった。
雪奈は一瞬、動画にくぎ付けになったが、すぐに手を下ろし首をぶんぶんと横に振った。

「馬鹿らしい」

乗せられてしまった。信じていないのに馬鹿みたいだ。雪奈は立ち上がり、リビングを離れた。
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