かつて女の子だった人たちへ
週一回のライブ配信はちょうどその夜だった。
俊夫は日中のトラブルが原因なのか、他の理由なのか帰宅が遅くなると連絡してきた。ちょうどいい。絆を少し早めに寝室に送り届け、寝室でライブ配信を繋いだ。

『こんばんは、クレマチスです。皆さんと作る大地のヒーリングクラス、今夜も心を癒していきましょう』

クローズドなオンラインサロンだ。配信よりももっとスピリチュアル要素の強いトークが繰り広げられるのではないかと雪奈は身構えた。
実際のところ、クレマチスのトークはとても普通だった。今ハマっているグランピングの話から始まり、星空を見ながら瞑想をして眠ってしまったなどと笑う。動画サイトで見るよりもナチュラルで、友人の話を聞いているような感覚だ。
さらに、以前行われたらしいビデオミーティング交流会での裏話や、今度行われるオフでの交流会の話。彼女の言うところの浄化ミーティングというものなのだが、どうやらみんなで集まって食事やキャンプなど楽しいイベントを経験することでリフレッシュをはかるものらしい。

(……なんだ)

雪奈はその様子に安堵した。

(スピリチュアル系って謳ってるけど、ただの友達サークルみたいなものじゃない)

考えてみればクレマチスの配信はいつも仰々しい言葉を使わないし、宗教や哲学の要素も薄い。“大地のパワー”という言葉はよく使うが、それは皆の意識を統一する合言葉的な使い方にも思えた。

(ネットでの交流なんて今は普通だもんね)

俊夫のように浮気相手を探しているわけでもない。趣味のサークルに入会したと思えば、オンラインサロンもいいものではなかろうか。雪奈はクレマチスの友人同士のような配信を見ながら、すっかり気持ちが上向いていた。

配信が終わると、オンラインサロン専用のSNSに個別メッセージが自動配信されていた。新規会員はカウンセリングを優先的に受けられるというものだ。雪奈はその場でカウンセリングの予約をした。

(直接話してみて、何か勧誘されたらすぐにやめよう)

マンツーマンで話したら霊感商法をされたとか、宗教勧誘をされたということもある。信頼がおけそうな人だったら、むしろいい出会いかもしれない。
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