かつて女の子だった人たちへ

第4話




女優になりたい。
子どもの頃からの夢だった。

舞台で、映画で輝いて、多くの人に感銘を与えたい。愛され、求められる存在になりたい。
人より整った顔立ちに生まれた自負があった。頭もそう悪くない。中学では演劇部、高校時代にオーディションを受けて芸能事務所に入った。
うまくいかなかったのは、自分に運がなかったからだ。雪奈はそう思ってきた。
チャンスの数は人によって違う。自分にはチャンスが極端に少なく、ものにできなかった。仕方なかったと自分を納得させつつも、自意識はひどく低下した。

ラウンジ嬢と呼ばれる職について、自分がそれなりに男性に求められる容姿であることは思い出せた。リッチな男性に言い寄られるのは悪くなかったし、その中でもいい人と巡り合って結婚できた自分は“人生あがり”なのだと思ってきた。

だけど、本当の意味で満たされていない。雪奈の心は夢を見失ったときから、ずっとさまよっている。
何者にもなれなかった自分を持て余している。

(俊夫の浮気があったから、自分に気づけた。クレマチスさんに会えたし、大地の治癒者にもなれた。これもすべて定められたことだったのかもしれない)

特別な力があっても、気づかずに終わる人はきっと多くいる。縁あって大地のパワーを扱える立場になったのだ。クレマチスの言う通り、自分のような精神的に満たされない人たちを救っていこう。それが使命だ。
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