かつて女の子だった人たちへ
「ねえ、いつから俺のこと狙ってたの? 仁藤さんに好きな人だって紹介されたんだろ?」
「ん~、弓を傷つけたかったわけじゃないよ。でも、初めて会った日、敬士と話しているうちに好きになっちゃったんだもん」

可愛らしくじいっと見つめると、敬士がおおいかぶさってきた。きゃあと甘い声をあげながら、令美は敬士の腕の中で続ける。

「敬士は私の理想の男性だよ。格好いいし、仕事もできるし、真面目で優しいし」
「エロいし?」
「やだ、もう! シたばっかりでしょ」

令美は敬士の愛撫を押しとどめて真心のこもった視線を向ける。

「敬士、ずっと一緒にいたいよ。いつか私のこと、お嫁さんにしてくれる?」
「俺のレミが可愛いんですけどー」

敬士が令美の首に顔を埋め、ぐりぐりと鼻っ面を押し付けてくる。

「ね、敬士、同棲するんだよ? 結婚前提じゃなきゃ、やだよ」

言質を取っておこうとねだる令美をキスでふさいで、敬士が「うん、わかったよ」と答えた。

(適当な返事……)

もう一度セックスをしたいから、流したような言葉ではあった。二十六歳の男性に、すぐに結婚を迫っても反応は薄いだろうとは想像していたので、これ以上は言わず令美は行為に没頭することにした。終わったら、寝る前に同棲するマンションの候補先を見せよう。
同棲の約束は取り付けてあるのだ。令美主導で動いてしまえばいい。

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