かつて女の子だった人たちへ
令美はあっという間にマンションを決めた。
ふたりの職場に通いやすい賃貸で、山手線の内側とはいかないが、充分栄えた地域にある。通勤時間は四分の一。築浅で内装はドラマで見るような綺麗さだ。ひとりで払うには少々高い賃料だが、ふたりの給料なら払いきれる。

引っ越してきてすっかり荷物を整理した部屋を眺め、令美は満足の心地でうなずいた。

(初期費用のほとんどは私が払ったけど、先行投資よね)

マンション契約に必要な金銭は令美が払った。早く契約を済ませてしまいたかったし、敬士も後で払うことに了承している。
新しく入れたソファや大型液晶のテレビ、ダブルベッドなどは、敬士のリクエストで令美が購入した。コツコツ貯めた貯金はほとんどなくなったけれど、敬士が喜ぶなら安いものだ。

なんでも、敬士の実家は埼玉で大規模な農業を行っているらしく、地元の開発でかなり土地を売ったため資産もあるらしい。しかし、両親の考えで若い敬士を甘やかさないようにと日々の生活費を支援したりはしてくれないそうだ。だから敬士は職場に近いのを理由に、都心のぼろアパートに長く住んでいたという。
実家が太いならひと言くらい相談すればいいのにと敬士に不満を覚えないわけではなかった。未来の嫁とともに住む部屋を借りると言えば、両親だって少しは出してくれるに違いない。しかし、別の見方をすればきちんとした家庭なのだろうし、親に頼らずにやっていこうとしている敬士には気概がある。

(敬士は次男だし、実家に入れとは言われないわよね。つくづくいい旦那候補を見つけたわ)
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