かつて女の子だった人たちへ
その日、令美には約束があった。終業後にやってきた新宿のダイニングバーには、すでに待ち合わせの相手が来ていた。
「令美、今日はありがとう」
仁藤弓は令美の幼馴染だ。家が近所で幼い頃は母親同士の仲が良かった。同じ女子校の幼稚舎から高等部までをともに過ごし、大学は指定校推薦で同じところに入った。弓とは格別に仲がいい関係ではない。交友関係も見た目も性格も真逆だと令美は思っている。
「弓、遅くなってごめんね」
令美は弓の隣にいる男性にぺこりと頭を下げ、用意された席にかけた。
「いいの、今日はありがとう。松田くん、私の幼馴染の久原令美。令美、こちら同期の松田敬士くん」
「こんばんは。松田です」
令美は素早く男性をチェックした。入店してきたときから感じていたが、ルックスはかなりいい。座っているから確定ではないが、身体つきは細マッチョといった体型で、おそらく180センチ以上ある長身。はっきりした目鼻立ちで、眉はきりりとしているし、口は大きいが下品には見えない。
「はじめまして、令美です。弓がお世話になっています」
令美は極上の笑顔を作った。
「仁藤さんの言っていた通り、久原さんってすごい美人だね」
敬士も笑顔になる。その笑い方は、やにさがった笑顔ではなかった。令美に近づく男は大抵鼻の下を伸ばした下心のある笑顔を見せる。目の前の彼は様子が違う。爽やかで、こちらを尊重してくれそうな距離感がある。
「令美はなんでもできて、綺麗で、自慢の幼馴染なんだ。子どもの頃から頼りにしてるの」
「へえ、仁藤さんも社内で人気者だと思ってたけど、そんな仁藤さんが頼りにするなら、久原さんは完璧な女性ってことじゃないの?」
「そんなんじゃないんです。もう、弓ったら無理やり褒めないで」
「令美、今日はありがとう」
仁藤弓は令美の幼馴染だ。家が近所で幼い頃は母親同士の仲が良かった。同じ女子校の幼稚舎から高等部までをともに過ごし、大学は指定校推薦で同じところに入った。弓とは格別に仲がいい関係ではない。交友関係も見た目も性格も真逆だと令美は思っている。
「弓、遅くなってごめんね」
令美は弓の隣にいる男性にぺこりと頭を下げ、用意された席にかけた。
「いいの、今日はありがとう。松田くん、私の幼馴染の久原令美。令美、こちら同期の松田敬士くん」
「こんばんは。松田です」
令美は素早く男性をチェックした。入店してきたときから感じていたが、ルックスはかなりいい。座っているから確定ではないが、身体つきは細マッチョといった体型で、おそらく180センチ以上ある長身。はっきりした目鼻立ちで、眉はきりりとしているし、口は大きいが下品には見えない。
「はじめまして、令美です。弓がお世話になっています」
令美は極上の笑顔を作った。
「仁藤さんの言っていた通り、久原さんってすごい美人だね」
敬士も笑顔になる。その笑い方は、やにさがった笑顔ではなかった。令美に近づく男は大抵鼻の下を伸ばした下心のある笑顔を見せる。目の前の彼は様子が違う。爽やかで、こちらを尊重してくれそうな距離感がある。
「令美はなんでもできて、綺麗で、自慢の幼馴染なんだ。子どもの頃から頼りにしてるの」
「へえ、仁藤さんも社内で人気者だと思ってたけど、そんな仁藤さんが頼りにするなら、久原さんは完璧な女性ってことじゃないの?」
「そんなんじゃないんです。もう、弓ったら無理やり褒めないで」