財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

 辰巳さんについていくと、打ち合わせ室へ放り込まれた。向かい合わせで座った。

「お帰りと言うべきだろうな。そして、お疲れ。部長の件はよくやった」

「あ、ありがとうございます。辰巳さん、大丈夫ですか?大分痩せられたような……」

 辰巳さんはうなずいた。

「ああ、誰かさん達のせいで色々あって、俺は食事も喉を通らないときがあった」

「……え?戻ってきてすみません……」

「いや……謝るのは俺の方だ。あのときは守ってやれず本当に済まなかった。あんなに怒った崇さんを見たのも初めてだ。俺を即座にクビ宣告するくらいだ」

「あの……聞いていいですか?総帥はこのことどうおっしゃってるんでしょう」

「実は……お前のことは崇さんへは言うなと厳重に総帥から口止めされていた。二週間前に海外からの電話でお前のことを聞かれてさ。支社へ異動させたことをようやく話した。そしたら、翌週アメリカから突然戻ってきたんだよ。崇さんは総帥のところへ行くと、大声で喧嘩してた。専務のことじゃなくてお前のことだったらしい」

「辰巳さん、どうして崇さんが私を秘書にしたがっていたこと教えてくれなかったんですか?」

「俺もさ、本気だとは思わなかったんだよ。何しろ、専務はすぐにはダメだと却下したって聞いてたし、総帥は女性秘書反対しているからあり得ないと思ってたんだ」
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