財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

 周りは黒沢さんの言葉にうんうんと頷いている。

「……あのねえ!」

「真紀、ありがとう。大丈夫よ。確かに担当がいないから時間だけはある」

「なんで、香月さんは総会以降新しい担当役員も決まってないのにここにいるのかしらねえ……一年間何するの?」

 何も答えない私を見て、黒沢さんが近づいて来て耳元で囁いた。

「香月さん。あなたの彼氏の斉藤君は冷たいわねえ。何も秘書室長へ嘆願しなかったみたいじゃないの。結局、ここの雑用係になってしまったわね。辰巳さんだって何もしないし、四面楚歌ね」

 その通りだ。伸吾は苦境にある私を見ても庇いもしない。交際相手がこれだから皆私の陰口を平気で口にする。多分もう、彼とはだめだと思う。

 そんなとき、辰巳さんが私にメールをよこした。辰巳さんは私の大学のサークルの先輩で、秘書室に入ったときからとても可愛がってくれていた。また、お仕えする崇さんが日傘専務と親しいこともあり、私と仕事上接点もあった。
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