財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「彼女は特別よ。ほら、志村専務理事の秘書の橘さんもお嬢様だけど、そんな所みじんもみせないじゃない」
「そうだよね。私が親なら絶対橘さんのほうを嫁にしたいけど、ね」
小さい声で付け加える真紀。私はコーヒーをお盆に移すと同じく小さな声で真紀に言った。
「おそらく彼女達だけでなく、実際はもっと大勢のお嫁さん候補が社外にもいるらしいわよ。じゃあね」
給湯室を出ると、専務の部屋へノックして入った。
「あ、やっと来ましたね。今日はここでコーヒーが飲めるだろうと思ったから、朝一は飲まないで来たんです」
崇さんが専務に言う。
「それは、それは……香月君のコーヒーをそこまで楽しみにしていたのかい?」
「ええ、彼女のコーヒーは絶品です。コーヒーメーカーとは違う入れ方なんでしょうね」
私が二人のコーヒーを机において立ち上がったところだった。