ホテル ポラリス 彼女と彼とそのカレシ?
▫︎▫︎▫︎▫︎▫︎▫︎▫︎▫︎▫︎▫︎▫︎▫︎
多恵は、嘔吐しそうな屈辱感に、両腕を抱え込み震えを抑えた。
ねちこい口調、好色に側めた視線、清々しいほど俗念剥き出しの男が、何を望んでいるのかはわかっている。
それを承知で、こんなあからさまに男のスケベ心を煽るような服を着て媚びを売るなど、情けなくて堪らない。
しかし、背に腹は代えられない。他の金融機関にも何らかの圧力があったのか、人事を尽くした金策が全く実を結ばなかった以上、このままではポラリスの存続は絶望的なのだ。
多恵は、落ち込む気持ちを振り払うように、鈴を張ったような黒目がちの目をキッと上げた。
瑠璃色のシャツとアイボリーのスカートに着替え、黒髪を器用に纏め上げる。インカムのイヤホンを装着し、ネームプレートを付ける。最後に大きく深呼吸をひとつ。
──多恵は、見事にゼネラルマネージャーの顔へと変わった。