ホテル ポラリス  彼女と彼とそのカレシ?
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大和はビビっていた。
ただ純平に頼まれてついてきただけなのに、厨房裏で待っていたのは、秋葉と紗季だった。

ロビーの片付けを先にしておけばよかった──そう思っても、もう遅い。彼らの頼みごとを聞いていたら、また菜々緒に「サボってる」と叱られてしまう。

「おう、来たか」

うんこ座りのまま、顔だけ斜めに上げて秋葉が睨んでくる。
紗季は目を閉じたまま、腕を組んで壁に寄りかかっている。
どう見ても、休憩中という雰囲気ではない。なんか、ヤバい空気だ。

「まあ、こっち来て座れや」

おいでおいでと手招きされて、大和はビクビクしながら秋葉と紗季の間に体育座りした。

「おめぇよぉ、あのオカマにずいぶん気に入られてんだって?」

「オカマ?」

「あれよ、真っ赤なスポーツカーで優男と来た、派手なネーちゃん」

「あの人、男だったんですか?」

「おうよ。貴衣がそう言ってた。でな、そのオカマがGMをいじめてやがるんだわ」

「はあ……?」

「はあ? じゃねえ!」

いきなり頭をしばかれた。
……失敗した。賢い純平は、最初から当然のように距離を取って立っている。

「GMは、客だからって我慢してるけどよぉ。俺らの姫様がやられっぱなしってのは、見てらんねえだろ?」

紗季が深く頷く。
この二人が意見を揃えるなんて、奇跡か──そう思った瞬間、今度は紗季にも頭をしばかれた。

「きょとんとすんな!」

「す、すみません!」

大和は頭を押さえながら叫んだ。

「で、紗季とも相談したんだけどな、あのオカマ、俺らで追い出そうぜ」

「オカマを……オイダス……?」

三人が揃って、こくりと頷く。

「けどよ、俺らはキッチンからあんまり出られねえだろ? 料理に細工するなんてのは、俺らのポリシーに反するしよ」

秋葉が〝ポリシー〞なんて言葉を使ったことに、驚いた。
ジャイアンにはジャイアンなりの美学があるらしい。

「ってことで、相談だ」

秋葉がガッと大和の両肩を掴む。
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