私の彼は、一途な熱血消防士
 誠司さんの言葉にみんなが一斉に立ち上がり、美波ちゃんのお母さんが口を開く。

「運転に気を付けて。愛美先生、またいらしてね」

「まなみせんせい、またきてね!」

 美波ちゃんからも熱烈な言葉をかけられ、私は笑顔で答えると、誠司さんの後を追って玄関へと向かった。マロンはエアコンの効いた部屋から動かない。

 玄関で美波ちゃん親子に見送られ、私たちは誠司さんの家を後にした。

 誠司さんの車は、先ほど乗せてもらった軽自動車ではなく、黒のセダンだった。普通車だから助手席もゆったりとしており、乗り心地がいい。
 私の実家は駐車場が狭いので、両親も私も軽自動車だ。普通車に乗る機会は滅多にないので、こうして乗車させてもらえると、ちょっとテンションが上がる。

 車が発信する前に、幼稚園に電話連絡をしたいと申し出た。

「あの……、診察結果を幼稚園に連絡をしたいんですけど、いいですか?」

 本当は診察が終わった時点で連絡すればよかったんだろうけど、色々とキャパオーバーしていて失念していた。ようやく一段落ついたこのタイミングで報告しておかなければ。

 私が恐る恐る誠司さんに尋ねると、労災の申請に診断書の提出が必要なら、この足で幼稚園に向かってくれると言うので、素直に甘えることにした。
< 156 / 305 >

この作品をシェア

pagetop