私の彼は、一途な熱血消防士
 誠司さんの手を煩わせることなく入浴を無事に済ませることができて、私は満足だった。

 浴室から出て用意していた服に袖を通すと、身体や髪の毛を拭いたタオルを洗濯機の中へ入れ、ボタンを押してリビングへと戻る。

「あれ? 洗濯はしないんじゃなかったのか?」

 洗濯をする音を聞きつけた誠司さんが私に問いかけた。

「時間を置くと汗の臭いが取れなくなるので、下着以外は洗濯することにしました。下着は予定通り、明日実家に持って帰って洗濯してもらいます」

 リビングに置いているハンガーラックは、洗濯物を室内干しする時に重宝する。

 ここに洗濯物を干し、エアコンの当たる場所に置いておけば、明日の朝には乾くだろう。生活感丸出しの部屋に誠司さんも呆れるだろうけど、女性の一人暮らしだから、用心するに越したことはない。

「洗濯終わったら、干すの手伝うよ」

「ありがとうございます」

 普通だと、こういうことを手伝ってもらうことに抵抗があるけれど、事前に下着を抜いているせいか気が楽だ。

「髪の毛、乾かさないの?」

 水分補給をしようとキッチンに向かう私の後ろ姿に向かって、誠司さんが声を掛ける。

「風呂上がりで暑いから、少し涼もうと思って」
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