【短編】クールな幼なじみと紡ぐロマン
「じゃあとりあえず読んでみるから、絶対に消すなよ?」
「う、うん」

 念をおされてうなずく私に、玲衣くんは口のはしだけを上げるような笑みをうかべる。
 その顔がなんだか男の子らしくてカッコ良くて……つい見ほれちゃった。

「じゃ、また明日」
「あ……また明日」

 別れのあいさつも私は玲衣くんの言葉をくり返すだけになっちゃって、彼が自分の家の中に入るのをただ見送る。

「……また、明日?」

 玲衣くんがドアを閉めて、たっぷり十秒くらいたってからつぶやく。
 また明日ってことは、明日も会おうってこと?
 明日は土曜で休みだけど……玲衣くん部活は大丈夫なのかな?

「ううん、それより私……玲衣くんに小説のURL教えちゃったよね?」

 つぶやいてから片手で口をおおう。
 気分的には「わあぁぁぁ!」ってさけんで頭をかかえたい感じ。

 どうしよう!
 みんなに笑われるような作品、玲衣くんに読まれちゃう!
 は、早く消して――って! 消すなって言われたんだった!

「どうしようどうしようどうしよう!?」

 どうしようって何度も口にしてもいい案なんてうかばない。
 笑うみんなが悪いって言ってくれた玲衣くんだから、馬鹿にするようなことは言われないと思うけど……。
 それでも単純にはずかしい!

「どうしよう……」

 結局それしか言えない私は、夜眠るまでずっと玲衣くんの感想が気になってドキドキしていた。
 ……みんなに笑われて悲しかった気持ちも忘れて。
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