【コミカライズ原作】Re:活 前略旦那様 私今から不倫します
「一人で来たの? 誠さんは」
土曜日で本来仕事は休みだから当然訊ねられる。
「仕事で連絡がどうしてもつかなくて」
「忙しいのね、仕方がないよ」
「心配だから、しばらく病院の近くのホテルに泊まろうと思う」
母は誠を気に入っていて、あの人なら沙羅をずっと守ってくれるよと結婚前から言っていた。
「駄目よ。私より誠さんを大事にしないと」
「こんな時はお母さんを優先させてよ」
「ただ疲れがたまっただけだから」
父親に裏切られた母は、沙羅が平穏な結婚生活を送っていることがなによりの安心材料なようだった。本当のことなど言えるはずがない。
医師からはいくつか検査をするから、また来週来てほしいと言われた。暗に病状が悪いことを仄めかされ、絶望的な気持ちになった。
実家の父に恋人ができて、家庭が荒れ始めた頃のことを思い出す。
だんだん帰りが遅くなり、土日も出かけることが増え始めて、母は常にピリピリしていた。夜中に言い争う声で目を覚ますと、母が父を問い詰めていた。
『沙羅だっているのになにを考えているの! 私たち家族はどうでもいいって言うの』
『俺だって安らぎが欲しいんだ。家にいたってお前はイライラしてばかりでもう疲れたんだよ』
刃物のような言葉の応酬に耐え切れず耳を塞いで、布団に潜り込んだ。
翌朝起きると、両親はなにもなかったような顔をしていたが、家の中の温度が一気に下がったような気がした。
そのあとも、表向きは普通の家族のようにふるまっていたが、ある時を境に父は帰らなくなった。