【コミカライズ原作】Re:活 前略旦那様 私今から不倫します
同時に沙羅と母親の暮らしは貧しくなり、家は荒れていった。
受け入れがたい現実を受け入れ、心に毒をためた母親が蝕まれていく姿は、子供心に恐ろしかった。
誠と喧嘩をしてでも問い詰められないのは、あの経験があったからかもしれない。現実を見たくない。嘘だと言われたら、きっと信じた振りをするかもしれない。
「もうこちらには帰らないから」
最後にそう言って父が出ていった時、母子は嵐の中の小舟に取り残されたようなものだった。
母にはつかむべき手が沙羅の小さな手しかなく、沙羅もまた母ゆえに強いふりをしているだけのボロボロに傷ついた母の手を握り返した。
優しく温和だった母は人と付き合わなくなった。人は不幸な姿を知られることで余計に傷つくのだと知った。
小さな家の中で病んでいく母を助けることも、自分は自分と切り離すこともできず、真っ暗な世界に二人でうずくまるような気持ちで何ヵ月も過ごした。
しばらくは父親が、申し訳程度に仕送りを続けてくれたが、やがてそれも途絶えた。
愛を失うことは、生活の基盤を失うのと直結していたのだという事実に愕然とする。
心変わりとは、なんて残酷なんだろう。
ご飯を食べている時、母親が子供と心中するニュースが流れた。
思わず箸が止まる。
なんだか自分たちの成れの果てのようにも思われて背筋が凍りつく。
このままだとそうなってしまうかもしれない。
「大丈夫だよ、そんなことしないなら」
母がぽつりと漏らした。自分がそんなふうに思ったことが恥ずかしくなり、下を向いた。
手で顔を覆い、大声で泣き始めた母にしがみついて一緒に泣いた。
そのあとしばらくして、母は仕事を見つけ、表面上はなんとか日常を取り戻した。