彼をその気にさせる方法~ヤツと私の甘恋戦争。そう簡単には勝敗つきません~
大泣きもおさまると蒼真は病室に戻って来て私の顔を見て開口一番「ブサイク」と私の頬を撫でる。

「伊月そろそろメールの内容教えてやれよ」

「気が向いたら」

課長は蒼真の肩をポンと叩いて「遊佐またな」と手を振り出て行った。

「すっきりしたか?」

私に水を軽く飲ませてニヤッと蒼真は笑う。

「するわけない」

動く視線の範囲で蒼真を一睨みしてベッドに置かれた手を抓る。

「メールの内容教えてよ」
「教えない。告白の結果は?」
「絶対教えない」
「ふーん。俺も絶対教えない」
「今度は課長をその気に…」
「嫌、お前、まじでやめろ」

病室で痴話喧嘩。
私の気持ちはまだハッキリとしていない。

でも…きっと絶対好きになる。
いや…もう好きだと思う。

「蒼真には絶対言わない!」

強く言った私に蒼真は「アホ」とボソッと言うと私に優しく柔らかいキスを落とした。


二ヶ月後


「退院おめでとう」

「ありがとう」

退院してすぐ璃子の自宅マンションに行き経緯を全部話す。

あれから峯岸さんのご両親と弁護士さんと話をし私の全部を飲むと言う形で事件は終焉を迎え…私は異動する事にした。

「異動良かったの?プレゼン前で頑張ってたのに」

「言い出したの私だよ?資料作ってたらやっぱり目指したい物が…ね?」

一級建築士をもう一度目指そうと思ってる。
私が異動希望を出したのはうちの子会社でもある小規模な設計事務所。
大手でぬくぬくと仕事するのも良いけど私は厳しい方を選んだ。

「寂しいけど…あんたが決めたなら応援する!!峯岸さんの事件も私が防げたのに。本当にごめん」

璃子は顔を曇らせた。

「この件が有ったから色々考えられたわけだし。お金もたんまり貰えたから良し!!」

親友とも言える同期の璃子にも心配を掛けて毎日のようにお見舞いに来てくれた。

「璃子、色々ありがとう」

私はケラケラ笑って璃子の肩を抱いた。

「本当にあんたは…」

私の回した手をペチッと叩く。
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