シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
青々と茂る庭の入り口の木々は、雨粒に濡れてキラキラと輝いている。
梅雨の雨粒すらこんなに美しく見えるのは、それだけこのお屋敷が格式高い場所だからなのだろう。
敷かれた石畳に、靴やスーツケースについた泥が跳ね、跡をつける。
その度に、私は幾美家に拒まれている人間なのだと思い知らされる。
春先に、車で来た時には気づかなかった。
私は、これほどまでにこの場に場違いな人物であるということに。
ガラガラとスーツケースを転がしながら、幾美家のお屋敷の玄関にたどり着く。
玄関の戸を開けたのは、母だった。
「いらっしゃい、希幸」
一介の家政婦のように私を出迎えた母は、複雑そうな顔をする。
何か聞いているのだろうか。
「荷物はここに置いて行きなさい。それから、私も同席するよう言われてるの。応接室で、待ってなさいね」
「はい」
分かっていたことだけれど、もちろん幾美家の人たちは私を出迎えたりはしなかった。
この間訪れた時には、他の家政婦や幾美家ご夫妻も出迎えてくれたのに。
ごくりと、唾を飲みこんだ。けれど、こみ上げた不安は全然収まってくれそうにない。
私は、招かれざる客なのだ。
梅雨の雨粒すらこんなに美しく見えるのは、それだけこのお屋敷が格式高い場所だからなのだろう。
敷かれた石畳に、靴やスーツケースについた泥が跳ね、跡をつける。
その度に、私は幾美家に拒まれている人間なのだと思い知らされる。
春先に、車で来た時には気づかなかった。
私は、これほどまでにこの場に場違いな人物であるということに。
ガラガラとスーツケースを転がしながら、幾美家のお屋敷の玄関にたどり着く。
玄関の戸を開けたのは、母だった。
「いらっしゃい、希幸」
一介の家政婦のように私を出迎えた母は、複雑そうな顔をする。
何か聞いているのだろうか。
「荷物はここに置いて行きなさい。それから、私も同席するよう言われてるの。応接室で、待ってなさいね」
「はい」
分かっていたことだけれど、もちろん幾美家の人たちは私を出迎えたりはしなかった。
この間訪れた時には、他の家政婦や幾美家ご夫妻も出迎えてくれたのに。
ごくりと、唾を飲みこんだ。けれど、こみ上げた不安は全然収まってくれそうにない。
私は、招かれざる客なのだ。