シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「僕はそういうつもりはない」

 慧悟さんは拳を握りしめ、何かを堪えるように必死に顔を強張らせる。
 彼の身体が震えている。
 そんな慧悟さんを、奥様はため息混じりに見つめていた。

「ほら、希幸さんのほうが物分りがいいじゃない」

「違うっ! 違うだろ希幸!」

 奥様の言葉に、慧悟さんは牙を向く。

 違う、と言えたらどれだけいいか。
 でもこれが、私の一番望む形だ。

「違わないよ。これが私が考えた、幾美家にも慧悟さんにも一番いい方法。私と慧悟さんは、結ばれないんだよ。ずっと前から、分かってた。なのに……、意思が弱くて、迷惑ばかりかけてごめん」

 ぶれるな、私。
 これ以上、私は芯をぶらしちゃいけない。
 慧悟さんの未来を、幾美家の未来を潰しちゃいけない。

「謝るな! 僕は希幸とのこと、後悔なんて微塵もしてない! 希幸と一緒になれるなら、幾美なんて捨ててやる!」

 慧悟さんは言いながら、私に顔を近づけるよう前のめりになる。

「そんなこと言わないでよ!」

 点滴に繋がれた左腕が痛い。叫んだ喉が痛い。
 私は、そのくらい大きな声を出していた。
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