シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 慧悟さんは私の大声に驚いたのか、身体を引く。
 けれど私は、溢れ出す言葉を止められなかった。

「慧悟さんが幾美家の財閥御曹司として背負ってるもの、そんなに簡単に手放せるものじゃないでしょ? そんなに簡単に放り投げられるものじゃない。三社の社長だよ? 私一人と、そこで働くうん万人の人。慧悟さんの抱えているものは、私とは比べ物にならないよ」

「それでも、僕にとって希幸は唯一無二だ!」

「だったら幾美家だって唯一無二だよ! 幾美財閥傘下の企業で働いてる人たちも唯一無二! 私だけ特別扱いしないで!」

「それは希幸には関係ないだろ!」

「関係あるよ! 私、幾美家の皆が好きだもん!『捨てる』なんて言わないでよ、悲しいよ……」

 涙が溢れてきて、視界がぐちゃぐちゃになる。
 慧悟さんがどんな顔をしているのか、分からないくらいに。

 ぼんやりと見える慧悟さんの影は、何も言わない。

「分かってよ、私が決めた覚悟。私は最初から、慧悟さんと彩寧さんのウェディングケーキを作るために戻ってきたんだよ」
 
 あの日の約束は、パティシエールを捨てた今となっては叶わない。
 けれど、私が戻ってきた理由はそれだけだったのだ。

「でも、僕は――」

「私は慧悟さんが好き。好きだから、聞いて欲しい。わがままでごめんね、でも受け入れて欲しいの」
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