シュクルリーより甘い溺愛宣言 ～その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない～

「何をおっしゃっているの？」

　奥様が、オーナーに詰め寄る。
　けれどオーナーは奥様に優しい笑みを向ける。

「私はとある名家で働く家政婦と恋に落ち、子を授かりました。彼女はそれをひた隠しにし、私の前から去りました。私はそれが悲しくて、せめて彼女を愛しぬくために独身でいようと心に決め、今まで生きてきました」

「まさか……」

　驚く奥様の前から去り、オーナーはこちらに歩いてくる。
　私の顔を覗くように、こちらに笑みを向ける。
　その顔は、何か大切なものを愛でるような視線を含んでいる。

　けれど、すぐに視線を上げた彼は、ご夫妻の方を向く。　

「彼女は、私の娘です。彼女が姫川家の娘であるなら、慧悟くんとの結婚は何の問題もないはずですよね」

「そんなはず……」

　旦那様は驚き目をぱちくりさせ、奥様が青ざめる。
　ここからでは、オーナーの後ろになってしまい、慧悟さんはどんな顔をしているかはわからない。

　オーナーはすぐにこちらに向き直る。
　彼の伸びてきた手は、そっと私の頬を撫でた。

「突然言われて何を今さら、って感じるだろうけれど。私はキミの、父親なんだよ。……希幸」

「オーナーが、お父さん……？」