シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 慧悟さんと入れ替わるようにオーナーが下がる。
 慧悟さんは床に膝をつき、ベッドの上の私の頬を優しく撫でた。
 堪えていたはずの涙が溢れ出す。
 そっと頬を伝うそれを、慧悟さんは親指の腹で拭ってくれる。

「ねえ、もう一度教えて。僕は希幸と結ばれたいんだけれど、〝姫川家のお嬢様〟はそれでも僕から離れたい?」

 私は、もしも離れなくて良いのなら――

「一緒にいたい、です」

 決して口にしてはいけなかった言葉。
 思いが、胸の中から弾けたようにあふれ出す。

 慧悟さんが好きだ。
 慧悟さんの隣にいたい。
 慧悟さんと、幸せな家族になりたい。

「ああ、どうしよう。僕は今、希幸のことを抱きしめたいよ」

 慧悟さんは言いながら、私のおでこに優しいキスを落とす。

「でも、慧悟さん。会社のこと――」

 私が言いかけると、慧悟さんは優しく私の顔を覗く。

「幾美硝子が経営不振だって聞いたの。それは、私のせいじゃないの……?」

「なんだ、希幸はそんなことに負い目を感じていたのか」

 慧悟さんはクスリと笑う。
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