シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 ――そうだ、私は慧悟さんのウェディングケーキを作るために帰ってきたのだ。

 そんな単純なことを、思い出した。

 慧悟さんと、もう関わらなければいい。
 ウェディングケーキのことなら、彩寧さんを通せば話はできる。

 けれど、私がここにいると知った慧悟さんは、きっとまた私に会いに来るだろう。
 だったら、私は彼に会わないように気をつけなくては。


 私の胸の痛みは、どうでもいい。
 約束を果たせれば、それでいいんだ。


 もう、この恋心は仕舞い込まない。
 捨ててしまえばいい。否、捨てなければならない。


 涙と共にふう、と息を吐き出した。
 先ほどまでのことを、全部忘れるように。
 抱かれた記憶も全部、涙と共に流れてしまうように。
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