シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「慧悟は城殿家の彩寧さんと結婚するのよ。あなたも会ったことがあるでしょう?」

 彼女とは『会った』ばかりでない。
 彩寧さんは、慧悟さんにくっつく私を受け入れ、妹のように可愛がってくれる大好きなお姉さんだ。

「そんな……」

「慧悟のことは好きでもいい、チョコを贈ってもいい。だけど、一緒にはなれないの。ごめんなさいね」

『ごめんなさいね』

 奥様の最後の一言が、頭の中でエコーのように何度も響く。
 紙袋がクシャッと音を立てた。
 握る手に力を入れ過ぎたらしい。

 すると、奥様は私の手元に視線を移した。

「それ、慧悟に渡すんでしょう? だったら、送っていくわ」

「いえ、これは……」

 渡しても、意味がない。
 この気持ちは、叶わない。

 ならば、渡しても渡さなくても同じこと。
 フラれるくらいなら、想いは胸に秘める方がいい。

「帰ります。助けていただいて、ありがとうございました」
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